先日、以下のようなニュースを目にした。
雇用保険の加入条件を、今は「週20時間以上働くこと」となっているけど、「週10時間以上働くこと」に緩和するという内容。
「2024年の通常国会で関連法案を提出し、28年度にも実施する」とあり、実施されるのは5年後なのでだいぶ先ではあるけど、また搾取が増える予感がプンプン漂ってくるので、今のうちに確認していく。
今の日本で社会保険や税金の制度が変わると「実質増税なのでは?」という目で見るのが正しいスタンス。
「要件緩和」という言葉のイメージで「良い改正だ」と脊髄反射してはいけない。
基本手当の給付条件も併せて変更するのは絶対条件
現状の雇用保険では、基本手当(いわゆる失業手当。失業した際に毎月貰えるお金)の給付条件に以下がある。
ハローワークインターネットサービス - 基本手当について (mhlw.go.jp)
2. 離職の日以前2年間に、被保険者期間(※補足2)が通算して12か月以上あること。
ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。※補足2 被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切っていた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上又は賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上ある月を1か月と計算します。
補足部分が重要。
現状だと週20時間労働が雇用保険加入の条件なので、雇用保険に加入している人は、必然的に補足部分の条件も満たせることになる。
場合によっては「11日以上」は満たせなくても、80時間以上は満たせるはず。1ヶ月は最低でも4週間あるので。
でも、雇用保険の加入条件が週10時間以上に変更された場合、たとえば週2日、1日5時間働いてる人は、雇用保険には加入させられるけど失業しても失業手当は受けられないっていう保険料払い損なパターンになる。
この文章を書いている2023年11月28日現時点では、ネットでググっても、給付条件に触れている記事が見当たらなかった。
「雇用保険の加入条件が週20時間から週10時間に緩和されます。以上」みたいなものばかり。
今の日本を全く信用していない僕だけど、いくらなんでもこんな悪質な罠を仕込んでくるとはさすがに思えない。
だから、雇用保険加入の条件を週10時間以上からに変えるのなら、給付条件も併せて変えるとは思う。さすがに。
単純に考えると、11日以上→5日以上、80時間以上→40時間以上 とか。
さすがにこんな感じで給付条件も変えると信じてるけど、ちゃんとウォッチしていきたい。
というか最初からここの条件についても一緒に情報を出すべきだろう。
「要件緩和」だけ情報を出して、それに対して賛成の声が多くて失業手当の給付条件への指摘が少なければ、給付条件は据え置きのまま改正するつもりなんじゃないかって邪推をしてしまう。
だから「ちゃんと給付条件も併せて変えるのか見てますよ」と声は出しておきたい。
とはいえ。
ちゃんと失業手当の給付条件も一緒に変えるのだと仮定しても。
それでもこの改正は、今出てる情報から判断すると、個人的には反対だ。
その理由を次に書いていく。
週10時間以上20時間未満で労働する人は、そもそも雇用保険を必要とするのか?
雇用保険に加入すると、上述してきた基本手当(いわゆる失業手当)以外にも色々な手当がある。
以下、ハローワークのサイトからの引用。
ハローワークインターネットサービス - 雇用保険制度の概要 (mhlw.go.jp)
こんな感じで色々な手当があるのが雇用保険なのだけど、そもそもの話として、週10時間以上20時間未満の労働をしている人が、こういう手当を必要とするのか? という疑問がすごくある。
もちろん、週10時間以上20時間未満の労働者でも雇用保険に入りたい人はいるだろうけど、週20時間以上働いてる労働者と比べたら、雇用保険の必要性は低いとは思う。
週10時間程度しか雇用されてない人は、その雇用に生活を頼ってる度合いが低いわけで、つまり雇用保険の必要性も低いってことにもなる。
雇用保険に入るメリットに対して保険料が見合わないと感じる人が、週10時間以上20時間未満程度しか雇用されてない人の中には多いのでは? という感覚。
雇用保険の手当を必要としていないのに、週10時間以上働いているという理由で強制加入させられて、保険料を給料から天引きされるとしたら、それはもはや単なる負担増でしかない。
雇用保険料なんて年金や健康保険や所得税などに比べたら可愛いものだけど、それでも、必要としていない保険料を徴収されるのは納得いかない。
「雇用保険なんてたいした金額じゃないし、払ってもいいか」と思って今回の改正を受け入れてから、その数年後に「保険料上げます」と言い出すかもしれないし。
ありえすぎる。いつもの搾取パターン。まず「それならいいか」と思わせる小さな穴を空けて、その穴を拡大していく手法。
僕の生活に引き寄せて、影響を考えてみる。
僕は1年間のうち3ヶ月ぐらいは、週2、週15時間ぐらいアルバイトをしている。生活費の足しにするため。
現状の雇用保険の制度だと、雇用保険加入の条件である「週20時間以上労働」を満たさないので、雇用保険には入れない(入りたくもない)。だから保険料を払わなくていい。
でも今後、雇用保険の加入条件が週10時間以上に変更されたら、雇用保険の加入条件を満たしてしまい、雇用保険料を払わないといけなくなる。マジかよ。
1ヶ月未満の短期バイトなら、雇用保険の加入条件に「31日以上働く見込みであること」というのもあるから、そちらの条件で除外してくれるのだけど、3ヶ月ぐらいだと加入条件を満たしてしまう。
加入するかどうか選択制にしてくれればいいのに。
「週10時間以上20時間未満でも、希望したら雇用保険に入れるようになります」なら、それこそ「要件緩和」になる。
じゃあ、それでいいじゃん。
まあ、結局のところ目的は「雇用保険料が不足してきてるから徴収できる額を増やす」なのだろうから、選択制なんてまずないだろうけど。
選択制にしてしまったら、保険料の徴収額は増えても、しっかり手当を受けたい人ばかりが支払い、結果的に収支がマイナスになりそう。
たった週10時間程度の労働に対しても雇用保険を強制的に徴収してくるのだとしたら、ますます労働なんてしたくなくなる。
働いたら負け!
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