先日ニュースで見たのだけど、どうやら国民年金の納付期間を、現在の60歳までから65歳までに延長する案が厚生労働省にて議論されているらしい。
国民年金保険料 65歳まで納付へ議論加速、期間延長 - 産経ニュース (sankei.com)
現在のところ厚生労働省内では賛成意見多数のようで、このまま進むと数年以内に国会に改正案が提出され、あっさり可決されそうだ。
賛成意見にざっと目を通してみた。ざっくり要約すると以下。
「今の国民年金保険料は月額16,520円。支払期間が5年延長されると16,520円×12カ月×5年=991,200円。一方で支払期間が増えることで受給額も増えて、年間99,360円増える。つまり、991,200円÷99,360円≒10年で支払った分の元は取れて、それ以降は長生きした分だけ従来より多く年金を受け取れる。良い案でしょ?」
こんな話を真に受けて「ならいいか。賛成」となる人はまさかいないだろうと思いきや、真に受けてしまう人がいるのが現実の世の中なんだよな。
真に受けて素直に信じてるのか、あるいは庶民を騙そうとしてるのかは知らないけど。
騙されてこんな法案に賛成する人を1人でも減らすために、今のうちに自分の意見を書いておくことにした。
「10年で元が取れる」なんて信じるわけがない
まず、そもそもの話として、「高齢化により年金の財源が不足していく。だから財源を増やすために改正する」と言いながら「たった10年で元は取れるので良い案でしょ」と言われても、なに矛盾したこと言ってんだとしか思わない。
支払った側が元を取ってしまったら「財源不足を補うための改正」の目的を満たせないじゃん。
つまり、元が取れない人のほうが多くなるように設計されてるんでしょう。
65歳から受給開始して10年後の75歳。今の平均寿命と比べても確かにまだ若い。
でも、こんなの仕掛けがあるに決まってる。
金に関する話は、相手が言ってることの95%を疑うぐらいで丁度いい。そうしないと騙されて損をする。
そもそも年金保険料を令和5年度の金額である16,520円で計算してる時点でもう酷い。
国民年金保険料は年々値上がりしてる。
国民年金保険料の変遷|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
上記サイトに書かれてる数字をグラフ化してみた。
直近2年では若干の値下がりをしているけど、長い目で見たら右肩上がり。
令和6年度は16,980円に値上がりされることで決定済み。
どうせ今後も中長期で見たら上がるんでしょ。
もちろん保険料は気分で決まってるわけではなく計算式があり、その計算式を踏まえると今後はあまり上がらないように思える面もある(詳細は面倒なので割愛)。
でも、そもそも、その計算式自体を改訂したらそれまで。
ということで、今後も保険料は今の計算式と関係なく右肩上がりになるでしょう。
そしたら「10年で元は取れます」の前提が崩れる。
あと、今回は65歳までの納付期間延長を議論しているようだけど、実際に65歳まで延長されたら、その数年後に今度は「70歳までの延長を議論開始」とか言い出すに決まっている。
まず最初に「それならいいか」と思わせる穴を空ける。その穴から徐々に広げていく手法。お馴染みの手口。
つまり「10年で元が取れます」を信用できるわけがない。理由は以下。
- 元が取れるのなら改正の目的が果たせないじゃないか。
- 年金保険料はどうせ今後も上がっていく。
- 65歳まで延長されたら、どうせ次は70歳まで延長するんでしょ。
そもそも、強制加入のくせに後から納付期間を延長しようとするような保険なんか信用するわけがない。
どんな保険だよ。ブラックにも程がある。契約違反だろ常識的に考えて。
強制加入のブラック保険が「納付期間を5年延長しようと思いますけど、10年で元は取れるのでいいですよね?」と言ってきている。
それに対して「ならいいね。私、75歳より長生きできると思うし」とは当然ならない。
「そんな後からの制度改定は許されないだろ」と思うのが当たり前。
「でも財源が足りないんだからしょうがないだろ。対案を示せ」に対して
「でも財源が不足しているんだったらしょうがないだろ」と思う人もいるかもしれない。「反対するなら対案を示せ」という人もいそうだ。
個人的には、もうこんなクソ制度は廃止してくれてけっこう。今まで支払った金額を全額返してもらえば、自分で運用するのでそれで十分です。
今既に受給を受けててそれで生活している人向けの財源が不足するのなら国債発行して賄えばいい。
日本は未だに構造的にはデフレなんだから、じゃんじゃん通貨発行すればいいんだ。
世代間で不公平すぎるし強制加入後に納付期間を延長しないと成立しない保険なんて、もう構造的に破綻している。
破綻している制度を構造はそのままに改正して延命したところで根本的に破綻していることに変わりはないのだから、今後も不公平な改正を続けた先に崩壊するのは目に見えている。
年金保険料を上げ続け、納付期間が80歳までなり、もはや誰のための保険なのか意味不明になり、ぐっちゃぐちゃになって崩壊。
みたいなことになる前に、傷口が浅いうちに制度自体を無くしてしまえばいい。
で、iDeCoをもっと拡充して、広報する。
あるいは、ベーシックインカムを導入する。
あるいは、選択制にする。
65歳まで納付したい人はする。したくない人は現行のまま。
構造的に破綻している保険を残すことにはなるけど、強制よりはだいぶマシではある。
何年で元が取れる云々ではなくて、支払期間が伸びること自体が嫌
10年で元が取れるなんて1ミリも信じてない僕だけど、仮に本当に10年で元が取れることが事実だとしても、やっぱり65歳までの納付期間延長には反対。
そもそも、年金って老後の生活費を賄うための保険でしょ。
で、僕の感覚では、もう60歳を過ぎたら老後だよ。60歳を過ぎたらリタイアして隠居したい。
何が悲しくて60歳を過ぎてからも老後のための保険料を納めないといけないんだよ。
60歳を過ぎたら貰う側だよ生命倫理的に。
人間は歳を取れば心も体もどうしたって衰えていく。
どんなに綺麗ごとを並べても、健康的な生活をしても、それが事実。
人間が有機生命体である以上はどうにもならない。
生まれてから60年が経過して衰えた個体に仕事は辛いって。
そんな老後の人間が、なんで老後のための保険料をまだ「納める」側なんだよ。「貰う」側だろどう考えても。
100歩譲って、「貰えないが納めもしない」だ。
納める義務が生じると、その分だけ稼ぐ必要が生じる。勘弁してくれ。
「人生100年時代では、60歳も現役!」なんて言葉を耳にしたこともあるけど、ただ医療で死なないようにしているだけじゃないか。
酒、タバコを廃絶し、食品添加物も廃絶し、加工食品の危険性も周知して成人病や癌を激減できているわけではない。
従来だったら死んでるところを、強引な医療で死ねないだけ。
労働環境を改善して、労働に忙しすぎて病んでる人ばかりの庶民の暮らしが改善されたわけでもない。
60歳は老後であり仕事をするのが辛くなってくるホモ・サピエンスが、生命として進化して60歳でも元気バリバリになったわけでは別にない。
おわり
僕の意見は以上。
もちろん僕の意見への反対意見もあるだろうけど、正直、全く議論する気がない。
議論の余地なく反対だ。
仮に、本当に10年で元が取れるのだという話を説得力ある根拠を持って説明されたとしても、60歳を過ぎてからも老後のための保険を「納める」側にい続けるということにたいして、老化を宿命付けられた生命としての拒否反応がある。
あと、構造的に破綻しているのだから小手先の改正を続けてもその先に結局崩壊するのは目に見えているのに、不公平な小手先改正をしていくことにも反対だ。バカバカしい。
「65歳まで払ったら10年で元が取れる!私はそれを信じるし、私は65歳まで払いたい!」という人がいるなら、そう思う人たちだけで勝手にやってればいい。選択制にしてもらって。
おわり。